季節はずれの台風が四国を去った5月31日朝、テレビの天気予報に映った松山の空にはすでに青空が見えていた。この日、バーチャル村民を含む香川のグループが「吉野川源流クリーン作戦」と銘打って、白猪谷バンガローに宿泊する予定だった。他の「村民」も合流させてほしいとお願いしていたが、3日前に中止を流していた。
午後4時過ぎ、一人で本川へ向かった。白猪谷へと向かう手前の電光掲示板には「通行止」とある。ちょっと不安がかすめる。山道には小枝や小石が散乱、右手の山側からは水があふれ出て、あちこちが滝になっている。あと数キロという標識の所で、よく確認すればよかったが道を間違え10キロ近く走ってしまった。と、その時を待ってたかのように、雨と風が激しくなってきた。
“台風、Uターンしてきたんじゃないの!? 真っ暗になったら、やばい!”
バンガローの灯が見えた時はホッとした。ヤレヤレ、車を降りて、驚いた。この風雨の中、外でがんばっている。よく見ると、張られたでっかい青いシートは、バンガローの柱や車のホイルに巻き付けられ、全員がぬれずに動き回ることさえできるほど良く出来ていた。
横にはテントが一つ張られている。うどん専用だという。さすが、讃岐! もう一つのシートの下にはドラム缶があり、小さな女の子が2人うちわでパタパタ扇いでいる。こ、これが、うわさのドラム缶風呂だ。
「村長、入りませんか?」
一瞬、周りを見渡す。ふつう、ちょっとした衝立のようなものがありそうだが、なにもない。なんとオープンなことよと思いつつ、こんなチャンスはめったにないと、タオルを手にした。「これで星空が見えたらね」の遠くから声に、「まっこと!」と、一時の至福のために労苦を惜しまずドラム缶を積んできた恩恵に浴し、ご満悦。
風呂上がりにビールと手作りの餃子をほおばっていると、風雨がますます強まる。だが、「そろそろ中に入ろうか」という表情がどの顔にもない。シートにたたきつける雨の音、ゴオゴオと流れる川の音、ザアーバサバサッと木々を揺らしながら吹き付ける風の音、時々バチャッとシートにたまった雨が風にあおられ地面に叩きつけられる音もする。「スゴイですねー」。何かしゃべらないと落ち着かない。
しかし驚いたことに、ベビーカーに乗った生後間もない子をはじめ、数人の子どもに全く動じている様子がない。自然の音は怖くは聞こえてないのだろうか?
シートが風にあおられて大きく揺れたと思ったら、ついに音を立てて裂けてしまった。「撤収!」と、隊長?の声。雨は照明に照らされ、斜めの線に見える。片づけるみんなはもちろんずぶぬれ。あまりにも普段通りの自然な動きに、えらい!と、屋根の下で感心した。
役場の方が気を利かせて貸してくれていた小屋に落ち着きやっと、夫婦子ども連れが3組、20〜50代の男性が10人近くいることが分かった。向き合って食べたり話したりしていると、やおら若き子連れの女性がおっぱいをあげだした。職場で関係する男性の前で平気なのだろうか、こんな光景はすでに20〜30年前になくなったと思っていた。
逞しくあり優しくもあり、なんとよく打ち解けあったグループであることか……。理想の“バーチャル村”の一端に触れた気がした。